剣道の技術の基本に「構え」がある。
全日本剣道連盟では、一刀に関しては次の5つが構えとして定められている。
(1)中段
(2)上段
(3)下段
(4)八相
(5)脇構え
※二刀や片手での構えも定められているけれども、ここでは一旦置いておく。
まずは、それぞのれ構えが形式上どのように定められているかを確認しておこう。特に、手の位置と竹刀の方向に注目しておくと最初はわかりやすいと思う。
構え | 手の位置 | 竹刀の方向と位置 |
(1)中段の構え | 左拳は下腹部臍前より約一握り前 左手親指の付け根の関節が臍の高さ | 剣先の延長が相手の両眼の中央、または左目 |
(2)上段の構え (左諸手上段) | 左拳は、額の左前上約一握りの位置 | 剣先は約45度後上方に向け、やや右に寄せる |
(2)上段の構え (右諸手上段) | 左拳は、額の前上約一握りの位置 | 剣先は正中線約45度後上方に向け、正中線上 |
(3)下段の構え | 中段の構えと同じ | 剣先を相手の膝頭より下、約3〜6cm |
(4)八相の構え | 右拳の位置は右肩あたり、鍔を口の高さ、口からほぼ一握り離した位置 左拳の位置はほぼ正中線上 | 刃先は相手の方向に向ける |
(5)脇構え | 左拳は、臍の右斜め下約ひと握り | 刃先は右斜め下に向け、剣先は下段の構えより少し下げた位置 |
私の師匠は「全日本剣道連盟の5つの構えはひと拳の法則」と言っていた。体のどの部位からひと拳離れているか、それを頭にいれて構えを作っていくと形式としては覚えやすいと。ただし、次のようにも言っていた。
あくまで、全日本剣道連盟の剣道という枠組みでだよ。
と。流派によって理合が存在する。理合が変われば当然形は異なり、その構えを正確にとることを練習した先に「なぜ自分の流儀はそうした構えの理になっているかを考えること」の大切さを強調された。そして、
「それぞれの構えがどういう理によってとられているのかを考えることを習慣づければ、様々な視点から学ぼうとする姿勢が生まれ、他流や同流であっても他者の間違いや欠点よりも長所をみることができるようになる。それが、平和な時代の武道の考え方として大切なことだよ。これは構えに限らないよね」
だそうである。このことを言った後は、最後に必ずこの言葉で締めくくっていた。
「だからって、なんでもいいと言っているわけではないからね。さあ勉強しよう。」
参考:全日本剣道連盟編(2008)『剣道指導要領』全日本剣道連盟
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